和菓子だよりwagashi
秋の和菓子と行事
~葉月・長月・神無月~
昔の人々にとって秋は恵の時期であり、農業を中心に生きる日本人にとっては収穫を喜び来年の豊作を願う季節です。「立秋」から霜が降りる「霜降」までをご紹介します。
上生菓子「雁来紅」
今回紹介します上生菓子は「雁来紅」(がんらいこう)です。
雁が飛来してくる秋になると、葉鶏頭(はげいとう※雁来紅の別名)の葉が美しい紅色に染まる様をお菓子で表現しました。
雁は空高くV字型に飛ぶことで有名です。雁について調べていたら面白い四字熟語がありました。
「一雁高空」(いちがんこうくう)
群れから離れた一匹の雁が、他よりも高く飛んでいる様子。他よりも飛びぬけて優れていることのたとえ。
「沈魚落雁」(ちんぎょらくがん)
他と比べることもできないほどに美しい女性のこと。その女性を見た魚は恥らって水底に隠れ、女性を見た雁は見とれて空から落ちるということから。
四字熟語は想像力を働かせる面白いものですね。漢字を使わない諸外国にはない面白いものだと思いました。
上生菓子「残菊」
今回紹介します上生菓子は「残菊」(ざんぎく)です。
残菊とは、重陽の節句以降に咲く菊や晩秋・初冬まで咲き残っている菊のことを指すそうです。残菊は季語としても使用されることが多く、俳句の中にも多く登場します。
手紙を書くときに季語をよく使いますが、残菊も11月中旬から下旬にかけて使用されます。
「残菊の候」(ざんぎくのこう)は「菊の花も見納めの時期ですね」という意味だそうです。
この「~の候・・・」は時候の挨拶と呼ばれているそうです。手紙の冒頭に季節や天候に応じた心情や季節感を現す言葉として使われるそうです。時候の挨拶は同じ時期でもたくさんあり、その中から手紙の送り主の心情にピタリと合った時候の挨拶を見つけるのも手紙を書く一つの楽しみですね。